養護教諭

「チョットいいですか・・」と、Y小学校の養護教諭に声をかけられた。

先日の泊まり研修に付いていった先生なので「T君がお世話になりました。皆さんの御迷惑にならなかったでしょうか」と答えたら、とても嬉しい話しを聴くことができた。

 

T君があんなに笑うのを初めて見ました・・・・・学校ではいつもほとんど笑うことなどありません。

驚きました。

 

根気がなくて、やる気がない子だと言われているのですが、合宿研修で何度も何度もチャレンジしてできるようになり嬉しそうに笑った顔を見たとき、この子は素直で本当は頑張り屋なのではないかと思いました。

 

食が細くて好き嫌いが激しい子だと言われていますが、夕飯の時、「お代わりしてもイイ?」と言ったT君の顔を見たとき、こんな風に家族と一緒に食べる事がないのだろうナーとなんか・・不憫に思えました。

 

喘息のT君は、いつも薬を飲むのを忘れたと咳が止まらなかったりすることがあり自己管理ができないやる気のない子と言われていました。今回の合宿にきちんと朝用、昼用と薬を小袋に入れて持たせてくれたのですね・・・・薬を飲まないとみんなに迷惑がかかるからと、自分できちんと飲んでいました。

 

彼の体のこともあり、T君をずっと見ていて思いました。

彼を誤解していたのではないだろうか・・・本当は素直でやさしくて相手を思う子どもなのではないかと・・

 

嬉しかった・・・・学校に入るとはこういうことなのです。

こんな風に、一人一人の先生達に気づいて貰わないと、本当の意味で子どもは救えないのです。

 

 

私はT君の父親の支援をしたこともあり、T君が生まれたときから知っています。

母親が彼らを置いて中国へ帰ったことも、中国帰国2世の祖母に育てられたことも、その祖母の突然の死と中国語しか話せない祖父との生活。

3世の父親は13才で日本へ来たので合宿の連絡を見ても意味さえわからないはずです。

彼と一緒に合宿の準備ができる人は家族には居ないのです。

T君は「ボク合宿研修に行きたくない・・」と言うことで解決しようとした・・それがわかるから手伝いました。

 

彼は、優しくて思いやりのあるやさしい子です

確かに彼の今の環境は苛酷すぎる・・・・でも、逃げないで立ち向かって欲しかった。

みんなの手を借りて参加しなさい・・・参加することで、きっと発見がある・・・彼に、わかって欲しいと思いました。

先生、どうぞこれからもT君を宜しくお願いします。

彼が日本で生きていくためには、学ばなければならない事がたくさんありますが、家族から学ぶ事はできないのです。彼の学びの場は学校以外ないのです・・

 

 

養護の先生は、改めて頷きながら言ってくれた・・・「日本語の先生が学校に入ってくれたから気がついたことです。異分化の子どもを、知らず知らずのうちに誤解と偏見で見ていた自分に気づきました。先生の活動と子どもへの接し方を見て、わかってきたような気がします。」

 

日本語指導者は、日本語を教えるのが仕事・・・・

しかし、学校の現場へ日本語指導者が入るためには、もっともっと整備しなくてはならない事がたくさんある

 

それを知っているのは日本語指導者・・・・一番知らないのが・・文科省?