ぼくの誕生日・・・

「ねー誕生日って誰が決めるの?」・・A君(小学3年生・・中国帰国3世の父親と中国人の母親)の突然の質問

 

「赤ちゃんが生まれたよ~て聞いたことがあるでしょ、その生まれた日を誕生日って言うのよ・・どうして急にそんなこと聞くの?」→「じゃ・・僕の誕生日はいつなの?」・・私は一瞬戸惑った・・

 

そうか・・A君が2歳・兄のT君が5歳の時両親が離婚、中国人の母親は中国に帰国してしまった。
日本生まれで日本国籍を持つ兄弟だが、中国帰国2世の祖父母と3世の父親に育てられ言語環境も生活環境も日本とはいえない環境で育ってきた。

 

兄弟が日本語教室に来るようになったのは一年前・・・

母親代わりに気丈に育てていた中国人の祖母が病気で亡くなり、学校からの諸連絡が滞ったり生活環境の不備が問題になり、学校から相談を受けたことがきっかけだった。


日本国籍を持つ二人は日本語支援の対象児童には入らない。

家庭環境も言語環境も知られることなく、K君は言葉の支援クラスに通い、兄(小学5年)はやる気のない自暴自棄な子として受け止められていた。

 

兄弟の場合、言葉の学級へ通って改善できるものではない、基礎日本語そのものが欠落している。
そして・・生活環境そのものも日本社会から乖離されて育ってきた子供である・・それらを認識した上で支援しなければ適切な対応などできない(面倒?)

 

そのために日本語指導者がいる・・基礎日本語が欠落し学習言語が理解できない子供(バカだから理解できないのではない)の支援をするのが日本語指導者の仕事・・・日本語指導が必要な子と障害児の違いが判らない場合があるが・・ほとんどの子供は基礎日本語の指導を徹底することで、高校進学を果たす。

 

 

兄弟が日本語教室に来るようになり一年が過ぎた・・・

学校にも支援に入れるようになったが、取り出し指導は担任に拒まれている。
頭が悪いわけではないので、きちんと授業を聞いていたら理解できるはず・・取り出すことで授業に遅れるのは困る(先生が困る・?)

正直、取り出すことでカバーできることは多々あるが、子供の居場所をなくすわけにはいかない(学校に嫌われない配慮も日本語指導者の仕事)

 

学校へ入る一番のメリットは、授業内容と子供の学習状況が把握できること。日本語教室に来た時、重点的にその部分をカバーできるからである。

 

一年がたち・・ようやく・・兄弟は勉強することに前向きになってきた。
きちんと宿題もやるようになった・・持病の喘息で時々病院に行かなければならないが、日本語教室には必ず参加する・・

彼曰く「家まで迎えに行くのと、弁当が食べられるからじゃないのか~」(苦笑)

 

そんなA君からの突然の質問・・「誕生日って誰が決めるの?」
誕生日のお祝いをしたことがない?

誕生日は父親がレストラン(ガスト)へ連れて行くとのこと・・誕生日=美味しいものを食べる日?(そうか・・毎日が誕生日だったら嬉しいね~)

「ケーキにローソクを立てて消すんだよ・」とT君(小学3年生フィリピン)、A君は「僕そんなことしないよ~・・ローソクって何?」

 

聞いていて思った・・この際、誕生日を教室でやっちゃおう!!

11月6日はK君の誕生日

11月7日はT君の誕生日

2人とも、9歳になる。

 

昨日の日本語教室の後半は、二人の誕生会

ボランティアの高校生が修学旅行のお土産を持ってきてくれ、T君のお母さん(フィリピン)がお菓子と飲み物を差し入れてくれました。

 

教室の電気を消しケーキのろうそくに火をつけ、二人の誕生を祝ってみんなで「Happy Birthday to You」を歌いました。

K君は、生まれて初めての出来事?!に興奮気味(苦笑)

 

こうやってみんなと一緒に勉強できるのは、貴方達が元気で生まれてきたからだよ・・ここにいるお兄さんたちにも姉さんたちにも、みんな誕生日があるの

 

生まれてきてよかったね」と、お祝いするために誕生日があるの・・わかった?→「ウン」

 

異文化の親を持つ子供は・・いつも・何かを我慢している

親の苦労を目の当たりにしている子供は・・いつも・・しかたないと諦めている。

子供の支援とは・・何なのだろう

 どんな小さなことにでも、耳を傾けてくれる・・

そんな大人がたくさん居たら、死を選ぶ子供はもっと減る気がするが・・

 

とりあえず・・騒がしい誕生会は終了(苦笑)

 

大きな声で歌ってくれた高校生(修学旅行のお土産ありがとう)とボランティアの皆さん、協力してくれた受講生たち・・

どの人にも感謝です・・生まれてきてくれてありがとう!!